書籍棚卸のアルバイト
書店で本の棚卸のアルバイトをやったことがあります。一晩だけの、単発アルバイトでした。
七階建てのビル丸ごとが店という大型書店で、約三十名のアルバイトが雇われ、一斉に作業が行われました。一人に一台ずつ配られたバーコードリーダーを手に、各自に割り振られたフロアへ行きます。所定の棚の前に立つと、片っ端から本を取り出してバーコードを読み取っていきます。棚の高いところには手が届かないので、脚立に乗って本を取ります。中には重い本もあります。なかなかにして重労働です。
私は政治経済関連の専門書が並ぶ棚に配属されました。私はそれまで、政治経済の本を自らすすんで読むことがほとんどありませんでした。読んだことのないような本を手に取るのは新鮮です。楽しく作業するうちに、時間は過ぎていきました。
ただ、バーコードをうまい具合に読み取る器用さは私に備わっていなかったようで、バーコードを読み取ることに何度も失敗して手間取りました。他の人のスピードよりもずっと遅いので、気持ちばかりが焦ってきます。
それでも、アルバイト作業員全体としては作業がムーズに進んだようで、朝7時までのはずだった作業が、6時までにはすっかり終わっていました。終了時刻が早まったからといって日当が引かれることもなく、予定よりも早く帰宅することが許されました。
真夜中の書店に入ることができるのは、滅多にない貴重な経験でした。もらった日当は、数日後にその書店での本代に消えてしまったため、あまり稼ぎにはなりませんでしたが。
美容体操
時間があると本を読んだり手紙を書いたりと、何かにつけて机に向かっていることが多い生活をしています。そのため、運動不足とお腹の肉が気になって仕方ありません。
そこで、DVDを見ながら美容体操をしています。毎日休まず続けることは難しいのですが、2、3日に一度はやっています。
アメリカ人の健康美溢れるインストラクターの動きを手本に、ウエストを細くするエクササイズに励んでいます。この美容体操は、スペースが2メートル四方もあればできます。手を振り回しても物に当らなければ大丈夫です。場所を取らない手軽さが魅力なのですが、やってみるとこれがなかなかきつくて、日ごろ使っていない脇腹や背中の筋肉が鍛えられます。
この美容体操を始めてから約1か月半が経過しますが、ウエストは5センチ減りました。ウエストだけでなく、背中や二の腕もすっきりした気がします。
私はあまり運動をすることが好きではなかったのですが、最近は、積極的に体を動かすようになってきました。せっかく女に生まれてきたのだから、なるべく美しくありたいものです。内面だけではなく、外見も輝く人になりたいです。そんなふうに、積極的に努力できるようになったのは、心が健やかな証拠でしょう。そのせいか、今、生活がとても楽しいのです。
美容体操には効果を感じているので、このまま続けていくつもりです。スタイルに自信が持てるようになれますように。
父の誕生祝い
父の誕生日プレゼントは、毎年決まって饅頭です。
ある老舗の和菓子屋が名物としている饅頭が、父の好物なのです。
父は寡黙な人で、家に居ても口数が極端に少ないのですが、ある日、その饅頭を口にして「こんなうまいものは初めて食べた」と呟いたそうです。これは、母の証言です。私が生まれる前の話だそうです。
それからというもの、父はその饅頭を愛し続けました。
私は父の誕生日に、その饅頭を贈り続けています。「誕生日に何がほしい?」と私が聞くと、父は決まって「何もいらんよ」と怒ったように返事をします。欲しいものをリクエストしてほしいと頼んでも、「いらん」の一点張りなのです。毎年同じ饅頭だったら飽きるだろうと、こちらから気をきかせて他の店の和菓子を買っていったこともあるのですが、「どうせくれるのならあの饅頭がいい」とぼやかれてしまいました。それ以来、そういった気をつかうのはやめにしました。それからはずっと同じ饅頭です。
その饅頭は、中の餡がしっとりしていて、外の皮はちょっと苦味があって香ばしいです。父が好きになるのも納得します。ただ、何十年もずっと飽きずに好きでいられるほど、心をつかまれるような味かといえば、そうでもないように思われます。とても素朴で地味なのです。
いずれにせよ、毎年父の誕生日プレゼントを何にしようかと頭を悩ませずに済むので助かります。同じ物が好きであり続けられる父の一途さや、好きなものへの誠実さを切に感じます。同じ饅頭に飽きないことに対して尊敬の念さえ抱くようになりつつある今日このごろです。